〈マンデー・オピニオン〉「時間がない」からうまれるもの

冷食日報 2018年6月4日付
リテイルライター太田美和子氏が先日、日本惣菜協会平成30年度通常総会記念講演で「欧米の変化するライフスタイルと食トレンド」をテーマに講演した。

その中で1日の平均食事時間については「1番長いフランスで133分、日本は93分となっている(OECD:2015年前後調べ)」という。1日3食と単純計算すると1食当たりの食事時間はフランスが約45分、日本は約30分、この時間を短いと捉えるかどうだろうか。

一方、米国での2017年スーパーマーケット(SM)惣菜市場規模は300億ドル、年間6~7%伸長しており、SMが惣菜売場を拡大する動きもみられるという。またコンビニエンスストア(CVS)でも1,000坪を超える店舗を開店予定、イートインスペースを設け、テイクアウトも充実させているそうだ。

惣菜市場の拡大などには消費者の『時間がない』が背景として見え隠れする。▽買い物をする時間がない▽調理をする時間がない▽食事をする時間がない――これら単独の場合や混在した理由が想定される。消費者の「買い物をする時間がない」「調理をする時間がない」に対し食品業界では解決策として▽EC▽買い物代行▽ミールキット▽レディトゥクック▽レディトゥヒート▽惣菜▽グローサラント▽ミールキットの宅配――などを提案し、購入場所・業態のボーダレス化が見られる。

ミールキットにはAmazon.comも参入し2017年世界市場規模は17億ドル、2016年の米国の市場規模が15億ドルなので米国市場がリードしている。しかし課題もある。ミールキットの宅配市場は確かに伸張しているが、定期購入につながらないことなどがネックになっているという。そこで随時購入できるSMでも企業買収、PB品製造などを実施、CVSも実験販売をした。

ちなみに米国のデータでは、ミールキットは調理工程が1、2工程の手軽な商品の売上げが75%を占め、調理時間の短縮よりも手間を減らす目線が消費者ニーズに合致しているという。

日本の家庭用ミールキット市場では生協やオイシックスなどの宅配サービスを中心に、チルド製品だけでなく冷凍製品も展開されている。またセブンイレブンでは地域限定ながら1人前のミールキットを店頭で受け取れるサービスを行っている。キユーピーも5月に東京・国立市に「キット惣菜」の認知度を高めるため、期間限定店を開いた。

一方、「食事をする時間がない」に対しては、仕事机や移動中に食べる「ながら食」の人が増えている。また軽量の食事を1日に何度も食べる「スナッキング」が新しい食パターンとしてうまれている。

「スナッキング」では食事の摂取回数が頻回となり消費者ニーズの傾向は▽機能性が高いもの▽健康志向なもの▽便利なもの▽手間が少ないもの▽片手で食べられるもの▽1度に沢山の食材を摂取するもの――になるという。

日本でも各メーカー、CVSが「機能性おやつ」などを商品展開し、仕事中の間食で極度な空腹、ドカ食いを防止し栄養補給やダイエットにつながると訴求している。また冷食では軽食・スナックがひとつのカテゴリーとなっているが、スナッキングの視点も今後の商品開発に有効なのかも知れない。

昨今、食品の購入場所がSM、CVS、ドラッグストア、ECなど多岐にわたり、食品・飲料・酒類EC市場規模も前年比7.4%増1兆5,579億円(平成29年度経済産業省調べ)とボーダレス化が進んでいる。外食・中食・内食のボーダレス化もますます進んでいくのであろう。手軽に素早く、健康的につまめる食の広がりを今後も追っていきたい。

〈冷食日報 2018年6月4日付より〉

【関連記事】
・惣菜の市場規模、初の10兆円突破 ライフスタイル変化を反映して拡大続く/日本惣菜協会
・ドラッグストアの拡大続く “食と健康”市場創造でスーパー・コンビニを猛追
・健康な食事・食環境の認証制度「スマートミール」、目的と概要(1)/日本栄養改善学会・武見ゆかり理事長インタビュー
・〈マンデー・オピニオン〉「普段使い」の食品スーパーとは
・〈マンデー・オピニオン〉テクノロジーの進化と学び続けること
・〈マンデー・オピニオン〉セブン‐イレブンの現金受取サービスの真意