日本冷凍食品協会は今年度の広報事業の事業計画のテーマを次のように掲げた。少し長いが引用する。

「キャッチコピー『ココロにおいしい、冷凍食品』をベースに事業を展開する中で、冷凍食品が身近なものとして、豊かな生活を送る手助けになることを伝えるため、『しあわせ広がる、冷凍食品』のフレーズを活用し、冷凍食品に対するポジティブイメージを高める。主な訴求対象として、未利用者が多い男性と、子育て世代に対する取り組みを継続するとともに、大きな需要拡大が見込まれるシニアに対する取り組みの比重を高める」。

「ココロにおいしい、冷凍食品」は14年度から使用しているキャッチコピーだ。冷食を使うことで時間の余裕と心のゆとりが生まれ、生活の質を向上させることができる――という利点をとらえ、“ココロ”という言葉から食卓の温かさや幸福感を感じてもらいたいという思いを込めている。

それ以前の4年間は「意外とスゴイ、冷凍食品」を使用していた。これを超える5年目に入る「ココロにおいしい――」は、業界内にはかなり浸透していると言っていいだろう。社会経済の急速な変化に追い立てられる慌ただしい生活に、ゆとりと潤いをもたらすというアピールは、時代に訴えかけるものがあると感じる。

一方「しあわせ広がる、冷凍食品」は前年度に提示した新フレーズだ。伊藤滋マルハニチロ社長は16年に同協会会長に就任した当初から、冷凍食品が常に身近なものとして“今その食シーンにある”ということを訴えていきたいと言ってきた。「しあわせ広がる――」は、その思いをもとに作られたフレーズであることが引用文からわかる。今年度もこれを踏襲する。

そして主な訴求対象は男性、子育て世代、シニア――。これも前年度と同じ。

と、ここまでは前年踏襲の形だが、前年度から変わったところがある。すなわち「冷凍食品に対するポジティブイメージを高める」という部分だ。前年度は「冷凍食品のネガティブイメージの払拭を目的として」PR活動を進めるという表現だった。

表現が負から正へ転換したこと自体に、業界の前向きな状況を感じさせる。しかし表現だけにとどまらない、取り組みの前進にも期待したい。

同協会がネガティブイメージの払拭を正面からテーマに掲げて取り組みを始めたのは、16年度のことだ。

「2年前に会長に就任するときは前年割れが続き踊り場にあった」と伊藤会長が言うように、14年・15年は消費税率引き上げと製品値上げが主因ではあるが、冷食の国内生産量は前年割れ(各前年比0.5%減、1.4%減)が続いた。その前は12年が4.1%増、13年が5.0%増と冷食市場が拡大局面にあっただけに、協会にはこの踊り場に対する危機感があっただろう。

栄養が損なわれていそう、おいしくなさそう、カロリーが高そう、保存料が入っていそう、「手抜き」と感じる――これら(中には誤ったものもあるが)伝統的な、冷食に対する負のイメージの払拭に向けて、協会では各種メディアやイベントを通じて、消費者とのコミュニケーションに取り組んできた。そんな中で炒飯、唐揚げの再興が踊り場の懸念を吹き飛ばした。

しかし伝統的な負のイメージが転換したわけではないのも事実だ。イメージ向上の地道な取り組みは今後も必要だ。ただし新たに提言したポジティブイメージの向上としては、誤解の払拭にとどまらず、“冷食の地位向上”を見据えて歩を進めてほしい。

〈冷食日報 2018年6月11日付より〉

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