【「神泡体験キット」は景品ではなく“ブランディングツール”―皆福課長】
仕事を終えて料飲店で空けるビールグラス。ひと口目を喉に流し込んで、グラスを置いて、うまさをかみしめつつ目をやると、泡とビールの間にモコモコとした微細な泡が生まれているのを発見することはないだろうか。その生ビールは文句なくうまい。微細な泡はビールの炭酸が再生されているものだ。しかし家庭では見ることができないのが、かねてから不思議だった。その“再生泡”を家庭でも“再現”できる画期的なツールを、今春、サントリーが「もれなく」プレゼントする。250万個という圧倒的な規模だ。3本・6本(350ml缶・500ml缶)に手動式を、1ケース(24本、350ml缶・500ml缶)には電動式を同梱して販売する。この大規模な投資に至る戦略を、皆福哲哉プレミアム戦略部課長に聞いた。
サントリー・皆福哲哉プレミアム戦略部課長

サントリー・皆福哲哉プレミアム戦略部課長

サントリーは「ザ・プレミアム・モルツ」で今年、〈神泡〉プロモーションを行う。「プレモル」の最高レベルの素材・製法に加えて、改めて業務用・家庭用それぞれのこだわりの注ぎ方によって実現する“クリーミーな泡”を訴える。しかし、いま、なぜ「泡」なのか?

「プレモルは、TVCMを見れば一目瞭然だが“しっかりグラスで、泡を楽しんでいただきたい”ということをずっと訴えてきた。缶から直接飲むよりも、グラスに注いだほうが、泡のおいしさをしっかりと実感できる。消費者調査でも、そういった“気づき”のコメントが増えてきた。いうまでもなく、泡はビールのひとつの大きな特徴だ。しかし、この“当たり前”のことを、プレモルのおいしさを知ってもらうひとつのきっかけとできる、と判断し、着眼した」(皆福氏)。

近年、清涼飲料と同じく、酒類も炭酸が好まれる傾向にあるが、ハイボールにしても、レモンサワーにしても、シャンパンにしても泡が液種の上に乗っかることはない。こんもりとした白い泡は、実はビールだけの特徴だ。もちろん、これまでビール各社は、ビールの泡の果たす役割や、そのおいしさを訴えてきた。しかし、サントリーは早くから「クリーミーな泡」に着目してきた。それは「飲用時品質を重視する」という企業風土から必然的に生まれたともいえるだろう。

その歴史を振り返っておこう。1985年には樽生品質セミナーを、87年にはドラフトアドバイザー制度をスタートし、今では常識となっているサーバーの毎日の洗浄の徹底などを指導するアドバイザーの育成に努めた。96年には論文「泡持ち向上」で、全米醸造学会会長賞を受賞している。99年には業界初の認定制度「樽生達人の店」をスタートし、2004年には飲食店で最高の泡を実現するオリジナルビールコックを開発、12年には家庭でもクリーミーな泡を実現できる「クリーミー泡サーバー」を、13年には飲食店向けに業界初の0.6ミリの穴に挑んだ「超クリーミーコック」を開発し、14年に、その採用基準に合格した料飲店を認定する「達人店」制度を開始している。昨年には泡持ちが1.2倍となる「スーパープレミアムコーティンググラス」を開発し、100万人規模で景品キャンペーンを行った。

これらの取り組みの集大成が今年から始まる〈神泡〉活動だ。ただ「ビールにとって当たり前の特徴」(同)を、いかにして「プレモルの独自の価値に転換する」(同)のだろうか。「一般的に、ビールにおける泡の役割は〈1〉ビールの苦味成分を吸着して口当たりをまろやかにする〈2〉泡が蓋になることで、ビールの深い味わい・香りを逃さない〈3〉炭酸ガスを逃がさない〈4〉ビールの酸化を防ぐ――があげられる。

しかし、実はビールを丁寧につくらないと、良質な泡は生まれない。だから、醸造家は泡を“ビールの履歴書”と呼ぶ。麦芽由来のたんぱく質、ホップ由来の苦味成分、そしてそれを高いレベルで制御する醸造技術の3つが鍵だが、プレモルはことごとく、それを実現している。消費者アンケートでは、“クリーミーな泡”と聞いて思い浮かべる銘柄としてプレモルはアドバンテージがある。つまり、お客様・醸造家の両視点から“泡”は、すでにプレモルならではの独自の価値になっている」(同)。

「手動SS式神泡サーバー」

「手動SS式神泡サーバー」

【〈神泡〉プロモーション、家業連動で複層的に展開、変化球も】
その上で、この「独自の価値」を認識してもらうマーケティング戦略が課題として浮上する。「一度聞いたら忘れない、ある種尖った、斬新なものにしたいと考えた。そこで〈神泡〉というインパクトあるネーミングをつけた。ポスターをはじめ販促物でも、今までにないシズル感のあるビジュアルを採用した。“泡”というビールのど真ん中の価値を伝えるためには、一回振り向いてもらう必要がある。ネーミングは、いろいろと案があったが“できるだけ短く、できれば4文字で”とこだわった結果、誕生した」(同)。

プロモーションも重要だ。これは「複層的に、肉厚に行う」(同)。まず1月から先行している業務用の活動だ。「これまでの樽生達人店1万3,000店を基盤として、今年、神泡品質提供店を3万5,000店にまで拡大する。神泡品質提供店とは、樽生三原則(毎日の洗浄・静置冷却・適正なガス圧)並びに、こだわり2カ条(きれいなグラスと自然乾燥・おいしいビールの注ぎ方)を遵守し、当社オリジナルノズル付サーバーを使用することが条件だ。すでに現状の超達人店・達人店は神泡品質を提供しているので、そのまま告知していただく。達人店までには到達していないが、モチベーションの高い飲食店に専用ノズルを提供し、そこを達人店以上に育てていく。達人店以上の認定には多少タイムラグは出てくるが、当社の取り組みによりレベルはほぼ同じとみてよく、すでに3万5,000店の目算は立っている」(同)。

業務用での地ならしを基礎に、家庭用では、3月に「神泡体験キット」を同梱した“特発品”の販売をスタートする。3月20日から、3缶・6缶セットに手動SS式神泡サーバーを年間約230万個、また1ケース(24本入り)に電動超音波式神泡サーバーを年間約20万個、それぞれ景品とする。このサーバーのポイントは「ビールをゆっくりと注いだ後にあとで泡を乗せる」ということだ。

普通にビールをグラスに注いでも泡はできるが、これは液中の炭酸ガスが泡に昇華しているわけで、液中の炭酸ガスは抜けることになる。しかし、神泡サーバーは、クリーミーな泡を生成し、後から蓋をする。そのため液中の炭酸ガスを逃がさず留めることができる。だから、前述したように、一口飲んでグラスを置くと、泡と液の間に微細な泡として炭酸が再生されるのだ。

「電動超音波式神泡サーバー」

「電動超音波式神泡サーバー」

「景品」と書いたが「これは、単なる景品とは考えていない。プレミアムであるがゆえに、単価の高いプレモルを、より一層、おいしく楽しんでもらうための“ブランディングツール”だ」(同)。プレモルの“戦略的兵器”というべき存在なのだ。だからこそ、投資を惜しまない。

その他、年間30万人にもなる、ビール4工場の見学者にも神泡サーバーを提供するなど、〈神泡〉プロモーションはきっちりと行っていく。

次に「飲むシーン」の提案だ。これまで曜日は特に意識をしていなかったが、年間を通して毎週木・金曜日にTVCMを放映し、“さあ。プレモルの金曜日。”というコピーで、週末の様々な時間の過ごし方を提案する。TVCMも、出演者はほとんどしゃべらず、泡にスポットを当てたものになるという。

加えて、大手レンタルチェーンのTSUTAYA とタイアップして、2月23日から、毎週金曜日に、TSUTAYA にプレモルを1本持参すれば、旧作DVDレンタルを一本無料とするキャンペーンを実施する。「週に1回使える。レシートではなく、現物をレジに示すというのがポイントで、いい宣伝にもなる。これも年間を通してやっていく」。

これらの全ての取り組みを通じて、関心を持った方をホームページに誘導し、独自の価値を納得してもらう。すでにホームページの特設サイトでは、〈神泡〉情報サイトをオープンしており、随時、情報を更新していく予定だ。

以上の複合的な取り組みを総合すると、今年の戦略は、プレモルは「圧倒的なおいしさ品質」がある、「だからこそ、ごほうびにふさわしい」という、この2つの価値を徹底的に伝えていくということに尽きる。そのために〈神泡〉プロモーションと、週末に愉しむプロモーションは両輪となる。

皆福氏は「酒類の総市場がシュリンクする中、ビールが“とりあえずの一杯”に成り下がっていることが悔しい。そのためには改めてビールの本質的なおいしさに注目を集められるかが勝負。プレミアムビールたるもの、その本質的な価値の訴求から逃げるべきではない。正々堂々とおいしさを伝え、市場活性化につなげたい。そのための投資を惜しまない一年となる」と力強く語った。

〈酒類飲料日報 2018年2月21日付より〉

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