【食品産業技術功労賞特集】③はくばく 「大麦の普及・消費拡大」

〈「拡大の始まり」、研究開発・情報発信を継続〉

第47回食品産業技術功労賞の連載三回目。「マーケティング部門」に輝いた(株)はくばく(長澤重俊社長、写真右)の「大麦の普及・消費拡大」。同社は1956(昭和31年)に創業者の長澤重太郎氏が「峡南精米(株)」としてスタート。長澤重太郎氏が開発した食べやすい大麦「白麦米(はくばくまい)」が現在の社名の元となった。創業から76年間にわたり大麦の普及・消費拡大に取り組む。近年では大麦の健康効果が広く認知されはじめ、大麦の取扱量は大きく増加している。

〈受賞の概要〉大麦製品の市場規模は2015年度の26億2,400万円から2016年度には68億2,200万円(160%増)と非常に大きく伸びた。同社はこの大きな躍進の下地となる活動を長きにわたって実施。大麦製品のトップメーカーとして新商品開発、大麦の普及・消費拡大に取り組んできた。また、国産の大麦の普及にも貢献している。2016年10月には国産大麦100%使用の「国産もち麦」を発売。国内の食用向け六条大麦の主産地である北陸では、2006年からの10年間で大麦の生産が約4割増加している。最も生産量の多い福井の作付面積は4,100ha から5,290ha と29.0%増加。富山は増加率が大きく、1,810ha から3,430ha と89.5%増加した。

大麦は水溶性食物繊維「β-グルカン」を多く含む機能性食品として近年注目されている。β-グルカンは食後血糖値上昇の抑制や、腸内環境の改善など、多数の健康効果が報告されている。

はくばくの近年の取り組みとしては、2013年頃から「いつでもどこでも大麦・雑穀」をスローガンとして掲げる。これまで大麦・雑穀の商品は米と一緒に炊飯して食べるものがほとんどだったが、パックご飯、レトルト大麦、業務用冷凍大麦等、大麦の食シーンを広げる新商品を多数発売してきた。また、各種メディアからの大麦情報に対する問合せにも積極的に対応。大麦の普及・拡大を担う大麦食品推進協議会のメンバーとしても積極的に活動している。また、2015年11月に機能性表示食品「大麦効果」を発売。大麦を「いつでもどこでも」食べられる環境作りに取り組む。〈受賞のコメント・長澤社長〉「大麦の普及・消費拡大」という内容で受賞させていただいた。当社にとっては「どまんなかの賞」といえる。大変嬉しい。

大麦の年間の需要はここ4~5年で約1万t増え、3万tくらいまで増えてきた。ただ、かつて大麦は200万tの需要があった。そこからすれば、「消費拡大の始まり」と捉えて、「この受賞を機にもっと頑張れ」とエールをもらったと思っている。

大麦の需要が増えてきたが、まだまだ国民の健康に寄与しているとはいえない。年間の需要が50万tになるとか、国民1人当たりの毎日の食物繊維摂取量を1g増やしたとか、そうしたところまで目指していく。私の代で達成できなくとも挑戦し続ける。

大麦が食物繊維の多い食品ということが、ようやく認知されてきた。穀物の中でも食物繊維が多く、食べやすくコストも低い、こうした基本的なことをもっと広めていきたい。そのためにも継続して研究と情報発信が必要だ。科学的により深い知見を掘り下げていくことと、それを分かりやすく情報発信していく必要がある。ここをセットにして今後も「大麦の普及・消費拡大」に取り組んでいく。

〈米麦日報2017年11月15日付より〉

 

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