【ケンコー食品工業・吉田努社長インタビュー】農業法人と契約して大豆を調達、地元・都城市産の在来種大豆「みやだいず」を全量買い取るみそメーカー
多くのメーカーが商社から大豆を買って商品をつくる中、みそ・しょうゆメーカーのケンコー食品工業(宮崎県都城市)は3つの農業法人と契約し、都城市産の在来種大豆「みやだいず」を全量買い取っている。「農家が潤わないと意味がない。みやだいすはフクユタカよりも高く買い、他の食品加工メーカーにはフクユタカよりも安く卸している」(吉田努社長)。
みやだいずとは、宮崎大学が新たな品種を求めて種子の提供を呼び掛けた際に、都城市内の農家から譲り受けたもの。吉田氏はみやだいずの普及に努めている。
吉田氏によれば、宮崎県には穀物の採れる土壌が十分にあり自給率も高い。農業が基幹産業であるにも関わらずなぜ海外産の大豆を使わなければならないのか、考えを巡らせている。もし明日、主要生産国の情勢が悪化したら、「みそやしょうゆは仕込んでいる間に解決してくれたらいいが、例えば豆腐屋の場合、明日の豆腐がつくれなくなる」と危惧する。
何かあってからでは遅いと同業者や加工業者に訴えるが、理解を得ることは難しかった。「原料がなくて閉業というようなことは、まず宮崎県にある会社は避けたい。そのために豆腐屋やみそ・しょうゆ屋は、原料の大豆を自分で調達できるルートを用意しておかなければならない」と考える。
2022年にウクライナで戦争が始まり小麦の需給がひっ迫したことを機に、調達ルートづくりは一気に前に進んだという。「少なくとも地元の食品加工メーカーは地元で採れたものを使うべきだと思った。そうしたときに私たちにとって致命的なのは農家がいなくなることだ。農家には潤っていてもらわないといけないので、少しでも高く買っている」とこだわりを語る。
○「将来的に都城の農家もメーカーも消費者も絶対喜んでくれる」、大豆粉やきな粉にも
全量買い取りを条件に農家と契約して1年目、大粒や中粒はほとんどなく、その多くが規格外だった。「これは困ったと思った。使えないものは畑に戻したが、お金を撒いているようなものだ」と吉田氏は笑う。来年も続けるか悩んだが、「この大豆がうまくいけば、将来的に都城の農家もメーカーも消費者も絶対喜んでくれる」と信じ、2年目も継続して取り組むことを決めた。
みやだいずは現在約30ha で栽培、約60t収穫されている。吉田氏が全量を買い取り、そのうち2割を同社で使用している。用途はみそ、蒸し大豆、煎り大豆、きな粉など。みそは同社のこだわりとして、冷蔵棚に置いてもらえる店としか取引していない。市内には同商品のために冷蔵庫を購入し、設置しているスーパーもあるという。

そのほか自宅でみそづくりが楽しめる「手作り味噌キット」(税込3,300円)も販売している。蒸し大豆(みやだいず)500g、麹500g、塩、袋、輪ゴムに、自由研究に便利な「手作りみそ観察日記」が付属している。タッパーに全て入っており、これだけあればみそづくりが完結する。現在4つの保育県で、11月にみそを仕込んで卒園式で親にプレゼントする取り組みが行われている。

収穫された残りの約8割は地元の食品加工メーカーに卸しており、現在はみそが3社、豆腐が5社、合計約30社がみやだいずを採用している。例として女性客の多いカフェでは、低糖質スイーツやパンの材料として、みやだいずの大豆粉を小麦粉の代わりに使っている。また、みやだいずのきな粉をまぶしたクッキーがヒットし、料理人が気に入ったことで、みやだいずが老舗料亭でひじきとして提供されることになった例もある。
〈大豆油糧日報2026年10月21日付〉







