【納豆連】食料システム法が4月施行、2つの努力義務が課されフードGメンが確認

農水省の新事業・食品産業部企画グループ食料システム連携推進室の皿谷俊祐課長補佐
農水省の新事業・食品産業部企画グループ食料システム連携推進室の皿谷俊祐課長補佐

食料システム法が4月に施行された。同法に基づく食品の適正な価格形成に向け、豆腐と納豆に関しては、コストの参考となる指標を作成する団体として、全国納豆協同組合連合会(納豆連)と豆腐2団体が「豆腐・納豆コスト指標作成協議会」として認定されている。納豆連がこのほど開催した青年同友会研修会では、「食料システム法について」と題して、農水省の新事業・食品産業部企画グループ食料システム連携推進室の皿谷俊祐課長補佐が講演し、同法の趣旨や目的、コスト指標についての説明が行われた。

皿谷課長代理によると、食料システム法は、大きく2つの柱から構成されている。1つは、「食品等事業者による事業活動の促進」である。事業者に計画を作成してもらい、認定されれば、税制上の特例や金融上の特例、低利融資などのメリットを受けられる仕組みだ。

もう一つの柱が、「食品等の取引の適正化」で、4月以降動き出した制度で、今回こちらが詳しく説明された。食品等の価格は、需給事情や品質評価を適切に反映し、当事者間で決定されることが基本だが、今回の法律では、新たに2つの「努力義務」が課されたという。1つ目は、持続的な供給に要する費用などについて、根拠となる資料を示して協議の申し出があった場合、誠実に協議に応じるよう努めなければならないこと。もう1つが、商慣習の見直しについて提案があった場合、検討・協力するよう努めなければならないことだ。これら2つの努力義務は納豆を含め、すべての飲食料品とその原材料の取引に適用される。そして、その努力義務が果たされているかどうかについては、農水省に配置されたフードGメンが確認するという。

○判断基準は6つのチェックポイント、業界全体で価格を決定するためのものではない

努力義務が果たされているかどうかを判断する基準として6つのチェックポイントが決まったという。1つは、協議の速やかな開始だ。コストが上昇している根拠を資料とともに示し、取引価格の引き上げについて協議を申し出たにも関わらず、相手方が多忙などを理由に協議自体に応じなかった場合は、努力義務違反となり得る。

2つ目は、資料の尊重だ。協議に当たって、公的統計などの資料を示したにも関わらず、それを尊重せずに協議を拒否することは、努力義務違反となり得る。

3つ目は、一方的な決定の禁止だ。取引価格や条件について、適切な話し合いを行わず、一方的に決定することも努力義務違反となり得る。例えば、取引先が補助金を受け取っていることなどを理由に、一方的に価格を引き下げるようなケースだ。これは買い手側だけに求められるものではなく、市況や実際の取引価格から見て希望する価格では販売が困難な状況で、生産者側がその価格以上で売り切ることなどを一方的に押し付けることも、努力義務違反となり得る。

4つ目として、商慣習の見直しについて提案があった場合には、速やかに検討・協力に努める必要がある。例えば、食品の納品期限に関する「3分の1ルール」を提案したが、見直し提案の検討すら行われない場合は、努力義務違反となり得る。また、人手不足などを背景に納品頻度の削減を提案した際に、十分な検討や協力が行われず、従来どおりの取引が続くようなケースも該当する可能性がある。

5つ目は、協議の申し出を理由とした不利益な取り扱いの禁止だ。コストが上昇したため価格を引き上げてほしいと協議を申し出た段階で、別の取引先に切り替えるといった萎縮させるような対応を取ることは認められない。

6つ目は、協議結果についての説明だ。協議に応じたとしても、提案について「検討したが駄目だった」とだけ回答するだけでは、誠実に協議したとは言い難い。提案のどの部分が受け入れられないのか、どのような懸念点があるのかを説明することが重要だという。単に検討したが駄目だったと伝えるだけでは、努力義務違反に該当する可能性がある。

6つのチェックポイントに基づき、努力義務が果たされているかどうかを確認するフードGメンは今年10月から増員し、全国42人体制で対応しているとした。

納豆を含めた5つの指定飲食料品については、認定を受けた民間団体が主導してコスト指標を作成し、取引当事者間の価格協議に活用できる仕組みとなっている。米は4月に米穀安定供給確保支援機構がコスト指標作成団体として認定され、その後、コスト指標が作成・公表されている。

豆腐・納豆は関係3団体を中心に「豆腐・納豆コスト指標作成協議会」が設立され、6月12日付でコスト指標作成団体として認定された。「影響力のある春の価格改定の商談開始時期に合わせて、10月を目途にコスト指標を公表する方向で検討が進んでいる」と述べた。

皿谷課長補佐は重要なこととして、コスト指標が取引価格を決定するものではないという点を強調した。価格はあくまで需給事情や品質評価などを反映し、当事者間の交渉によって決まることを確認し、「コスト指標は、認定された民間団体が作成するものであり、国が認めた最低取引価格のようなものではない。取引価格がコスト指標を下回ったからといって、直ちにフードGメンが何かを措置するということにはならない」と説明した。

速やかに協議し、検討結果について適切に説明したかなど、努力義務が果たされているかが重要だという。「コスト指標を尊重して協議を行った結果、相手方が希望する価格や数量、取引条件にならなかったとしても、それだけで努力義務違反となるわけではない。制度の目的は、コストが上昇した際に、その負担を価格に反映してほしいと申し出やすい環境を整え、相手方もそれを踏まえて検討できるようにすることだ」と説明した。

一方で、「コスト指標は使い方を間違えると批判されうる」と注意喚起した。同業者間で販売価格について合意することは認められない。例えば、コスト指標を基準として業界全体で価格をそろえることや、同じ利潤率を上乗せして販売価格を決めることは、独占禁止法上の問題となり得るとした。

「コスト指標は、個々の取引当事者間で価格協議を行うための参考資料として使用するものであり、業界全体で価格を決定するためのものではない。今後、コスト指標が作成された際には、その趣旨を理解した上で適切に活用してもらいたい」と呼びかけた。

○コスト指標は絶対値ではなく参考値、それぞれの会社で工夫して活用すること推奨

質疑応答の中で、「大手メーカーと小規模メーカーでは、納豆1個当たりの製造コストに大きな差が出ると思う。大手では例えば1個5円で製造できる一方、小規模メーカーでは30円かかり、もっと手作りに近いメーカーでは100円かかるということも考えられる。こうした市場規模が異なる事業者のデータを集めてコスト指標を作成した場合、補正値はどうするのか」と尋ねられた。

皿谷課長補佐は、「大手メーカーのデータが入ると、どうしてもその数値に引っ張られるところはある。より多くの回答をもらう中で、何社の回答であるか、加重平均すると大手コスト水準に近づいてしまうが、大手がどのくらい入ってその数字になるのかは、取扱数量を調査結果として公表すると、そういうものとして理解してもらえるのではないか」と話した。

コスト指標については、そのまま当てはめるのではなく、指標の前提条件や対象となった事業者の規模などを踏まえ、自社のコストに置き換えて説明するための参考資料として活用することを推奨した。

納豆連の長谷川健太郎会長(日東食品社長)は補足する形で、「2日前にコスト指標作成協議会が開かれた。農水省は監督官庁として関わっているが、実際には流通経済研究所が集めたデータを基に計算している。10月に豆腐・納豆のコスト指標が公表される予定だが、出てきた数字はすべての事業者にとって正しい数値というものではない。各社のデータを単純平均すれば、平均としては出るが、流通量によって差が出てくる。販売数量を合わせて加重平均すれば、どうしても大手の数値に引っ張られることになる」と説明した。

その上で、「絶対これが正しいという数値は出てこないが、大体こういう感じになっているという数字は出てくる。コスト指標は絶対値ではなく参考値となり、それぞれの会社で工夫して活用してもらいたい」とした。

〈大豆油糧日報2026年10月23日付〉